2014年7月13日

『第32回日本美容皮膚科学会総会・学術大会(浦安)』

今週末は、「東京ベイ舞浜ホテルクラブリゾート(浦安)」で開催された『日本美容皮膚科学会総会』に参加してきました。
二日間朝から夕方まで、様々な最新の美容治療について勉強してきました。
学会内容の一部について記載させていただきます。

①シミの光(IPL、フォトフェイシャル)治療
光治療の照射方法も日々進化しており、光治療の権威 東京女子医大付属青山女性医療研究所 根岸先生は、効果を出すために「二段階照射法(顔全体にマイルドに照射し、目立つシミにはポイントで強めに照射する)」で治療して美肌・美白効果を高めているとのことでした。私も全く同じ考えで、当院でもこの「二段階照射法」で光治療(ライムライト)を行っています。
また、最新の海外での報告(光治療による皮膚変化の遺伝子解析)では、光治療を行うことで、遺伝子レベルでも皮膚の若返りが認められたとのことでした。 根岸先生のご講演はいつ聴いても素晴らしいです。開業前、青山のクリニックで根岸先生にご指導いただいたこともあり、私の尊敬する先生の一人です。

②シミの外用療法「皮膚漂白療法」
トレチノインとハイドロキノンを用いた「皮膚漂白療法」の開発者 東大形成外科 吉村先生による外用治療。
トレチノインには、表皮ターンオーバーの促進により、メラニンを排出する作用があります。ハイドロキノンには、メラニン産生抑制により、メラニンを作らせない作用があります。この2剤を外用してシミを治療する方法を「皮膚漂白療法」と言います。当院でも開院時からこの治療を行っています。「皮膚漂白療法」について、以前吉村先生に色々を教えていただいたこともあり、私の好きな治療の一つです。

③ニキビ治療
京大皮膚科の谷岡先生のご講演はとても勉強になりました。
ニキビ治療のゴールは、ニキビ痕を残さないことです。
炎症性ざ瘡(ニキビ)の8.2%が3ヶ月以内ににきび痕(アイスピック様のスカー(瘢痕))になるとのことでした。
とういことは、ニキビ治療は最初の3ヶ月以内が最も重要だということになります。 日本のニキビ治療は、海外よりかなり遅れています。日本でディフェリン(アダパレン)が承認されたことで、ニキビ治療は格段に進歩しました。ニキビの標準治療は、抗菌剤内服・外用とディフェリン外用の併用療法が推奨されています。しかし、ニキビが改善したからといって治療をやめてしまうと再燃しやすいため、改善後も寛解維持療法としてディフェリンの外用を続けていくことが重要だとおっしゃていました。私も同じ考えで、当院では改善後6ヶ月以上ディフェリンの外用を継続していただくよう指導しています。ディフェリンはとても良い薬ですが、刺激症状が出るのが欠点です。そのため、当院では保湿剤を上手に使用しながら外用していただいています。日々診療していると、他院で治療していてディフェリンを上手に使いこなせず、刺激症状でやめてしまっているケース、また塗り方が適切でないケースなど多くの患者様が来院されます。ディフェリンを上手に使いこなせるようになると大半のニキビは良くなります。しかし、併用療法でも一部の難治例があります。その場合、特殊な外用剤(過酸化ベンゾイル:BPO)やレーザー治療、ピーリング、光治療などで治療を行います。来年には、ニキビの有力な外用剤の過酸化ベンゾイル(BPO)が承認されますので、保険内のニキビ治療がさらに充実していくと思います。

④表情ジワの治療「ボトックス」
現在、日本で唯一承認されている表情ジワの治療薬「ボトックスビスタ」について、北里大学形成外科・美容外科の佐藤先生による、眉間、額、目尻、咬筋、顎の注入方法について勉強することができました。特に眉間のシワには、シワのできかたにより、5種類(1型、11型、スクランチ型、オメガ型、横皺)が存在し、それぞれのタイプに応じた効果的な注射方法があります。当院でもその方法に準じて治療しています。ボトックスは注入治療の中で最も人気がある治療です。

⑤ダーモスコピー(皮膚の拡大鏡)講座
ダーモスコピーとは、皮膚(病変)を拡大(10倍)して観察できる拡大鏡の一種です。 ゼリーや偏光フィルターを用いることで皮膚表面の乱反射を取り除くことができます。 そうすることで肉眼では見えなかった皮膚の内部構造が詳しく分かるようになります。 ダーモスコピーはホクロやシミの色調やパターンが詳しく観察ができるため、悪性か どうかを判断するための情報がより多く得られます。
今回は、ダーモスコピー診断の権威 東京女子医大東医療センター皮膚科教授 田中先生によるホクロ・シミと悪性腫瘍(皮膚癌)のダーモスコピーを用いた診断についてのご講演を聞くことができ、とても勉強になりました。田中先生の書かれたダーモスコピーの本は私のバイブルで、何度も読んで勉強しています。
日々多くの患者様がシミやホクロのご相談、治療で来院されます。その中には、悪性を疑うケースもあります。当院では、まずダーモスコピーで診断し、少しでも悪性が疑われる場合には、必ず皮膚生検を行い、病理検査でしっかり診断した上で、治療を行っています。悪性の場合は、専門施設へご紹介しています。

⑥ジェネシスを用いたイボ(尋常性疣贅:ウィルス性のイボ)治療
順天堂大学浦安病院皮膚科 木村先生によるジェネシス(ロングパルスNd:YAGレーザー)を用いた難治性のイボ治療のご講演は、とても勉強になりました。海外でもこのレーザー治療の有効性が報告されています。私も難治性のイボにはジェネシスが効果的な治療だと考えており、数年前から当院でも多くの患者様に治療を行っています。
※作用機序は(海外の報告例では)
1)イボの栄養血管に対する熱作用
イボの栄養血管を熱偏性して、イボ組織を凝固・壊死させ血疱・痂皮を形成して皮膚の創傷治癒とともにイボを脱落させる。
2)温熱療法による免疫賦活化作用
液体窒素療法と比較して有意に表皮内のHPV(ヒトパピローマウィルス)DNAを減少させると報告されています。
レーザーでも1回の治療で完治は難しいです。当院では、2~3週毎に治療を行っています。最大の欠点は痛みです。氷で冷却しながらレーザーを照射していきますが、それでも痛みが強い場合には麻酔の外用剤を使用して照射しています。麻酔の外用剤を使用しても痛みは少なからずあります。他院で数年間液体窒素で治療してきたけれど、なかなか治らなくて相談に見える患者様も数多く来院されます。
現在当院では、小学生のお子さんから年配の方まで幅広い年代の患者様にこのレーザー治療を行っています。イボの患者様をできるだけ少ない治療回数で完治させたい一心で、日々一生懸命治療を行っています。レーザーは、スポット径や出力、パルス幅の選定が最も重要な要素だと私は考えており、どの設定が一番効果的か日々検討しています。また、レーザー治療の効果を高めるために、ご自宅での数種の外用処置を指導しています。これにより効率良く治療ができ、少ない回数で治療ができるようになってきました。大半の難治性のイボの患者様は、このレーザーにより完治できるようになってきました。もちろん中にはこのレーザーでも難治例が僅かに存在しています。その場合、さらに違う治療法で治療します。
※イボのレーザー治療は保険適応外(自費治療)となるため、通常最初からレーザー治療を行うことはありません。難治例や重症例などの場合にレーザー治療を行っています。
当院では、治療の第一選択は液体窒素(スプレー式)です。(※この場合でもご自宅で外用処置を併用していただくことで治療効果を高めることができます。) イボで悩まれている患者様はとても多く、当院ではイボに限らず、日常の診療で多い病気(Common Disease)をより少ない治療回数で早く完治させたいという強い気持ちで日々一生懸命治療を行っています。

今後も来院して下さる患者様のために、安全で効果的な治療を提供できるよう、積極的に学会やセミナーに参加し、スキルアップを行っていきます。

昨日は学会後、業者さん達と食事に行って来ました。
様々なレーザー治療や美容治療について熱く議論しながら、楽しい一時を過ごすことができました。
学会会場は、ディズニーランドのオフィシャルホテルでしたので、多くの家族連れで賑わっていました。

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